鉛を金に換えることに成功
鉛を金に換えることに成功 / Credit:clip studio . 川勝康弘
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鉛を金に換えることに成功 (3/3)

2025.05.12 21:00:54 Monday

前ページ鉛ビームが擦れただけで金誕生

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鉛から金を作るコストとは?:現代錬金術の本当の報酬

鉛から金を作るコストとは?:現代錬金術の本当の報酬
鉛から金を作るコストとは?:現代錬金術の本当の報酬 / Credit:Canva

こうして科学の力で「鉛を金に変える」こと自体は達成されましたが、残念ながらこれで一攫千金とはいきません。

前述のように生成される金の量はごくわずかで、一瞬で崩壊してしまうため回収は不可能ですし、そもそもLHCは数十億ドル規模のコストがかかる巨大加速器です。

いくら金の原子核を作れても、経済的にはまったく割に合いません。

しかしながら、核物理の観点から見ると、この実験には極めて大きな意義があります。

高速で帯電した重イオンがすれ違うだけで原子核が電磁的に崩壊し、新たな元素を形成するという現象は、ビームロス(加速器内の粒子損失)の重要な要因と考えられています。

ビームロスが増えると実験効率や加速器寿命に影響を及ぼすため、これを正確にモデル化できるかどうかが加速器運用の大きな課題です。

今回ALICE実験が蓄積した詳細なデータは、こうした電磁的核崩壊の確率を評価する理論モデルの精度向上に役立ち、将来より強力な衝突型加速器を建設・運用する際にも大いに活用されるでしょう。

ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校のJiangyong Jia氏も「電磁相互作用で原子核が変化する過程は、LHCのビーム品質と安定性を守る上で非常に重要です」と強調しており、ここで得られる知見は単なる“錬金術”の枠を超えて加速器科学全般に広く貢献すると述べています。

さらに視点を広げると、重元素の合成は超新星爆発や中性子星合体など、宇宙規模の極限環境で起こると考えられていますが、詳細な機構には未解明な部分も多いのが現状です。

加速器実験で明らかになった核変換の様式や反応確率の情報は、そうした天体現象や宇宙における“巨大錬金術”の解明にもつながる可能性があります。

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鉛を金に換えることに成功 (3/3)のコメント

ゲスト

夢があるけどコスト的な面ではまだまだ実用化は夢の話だし、作れたとしても価値が駄々下がりするからさびない特性を生かした何かになるかもね

    ゲスト

    作るのは金ではなく、効率が良くて寿命の長い加速器です。
     効率が良くて寿命が長ければ、同じ加速器を使ってより多くの成果が得られますし、省エネにもなります。
     次世代の加速器が建造される前であっても、既存の加速器の改良に役立つ可能性は高いです。
     ですから、コスト的には意味のある話ですし、遅くとも数十年程度の近未来の話ですから夢物語でもありません。

    ゲスト

    その錆びない特性が大きい
    劣化に強いというだけで稀少でなければ本来なら金で作りたいものは多いと聞く

田舎老人Nonbee

現代の錬金術には巨大なハドロン衝突型加速器(LHC: Large Hadron Collider)を必要とするから、学術的な意義はあっても実用的・経済的な価値はない。おまけにコンマ何十桁以下のほんの一瞬で消えるのだから、夢の実現に狂喜乱舞するにはあまりに短すぎる。鉛から金を生ませようとするのは途方もない金(かね)を鉛の中に投げ捨てるも同然なので、なまり間違ってもマネーしちゃ駄目だよ、子供たち。

    ゲスト

    >高速で帯電した重イオンがすれ違うだけで原子核が電磁的に崩壊し、新たな元素を形成するという現象

    を正確にモデル化する事で

    >将来より強力な衝突型加速器を建設・運用する際に

    ビームロス(加速器内の粒子損失)が少なく、寿命の長い加速器を建造する事も可能になります。
     ビームロスが少なければ加速器の単位運転時間あたりに得られる成果も増えますし、逆に言えば同じ成果を得るために必要なコストを削減出来るという事になります。
     また、加速器の寿命を延長出来れば、新たな加速器を建造せずとも実験を続ける事も可能になりますから、コスト削減になります。
     将来的には加速器の運用におけるコスト削減に役立つのですから、この記事で紹介されている実験で得られたデータは実用的・経済的価値があるという事を意味しています。

    ゲスト

    極めて重要な成果も一般人には凄さが実感できないもの
    その点「錬金術に成功」っていうトピックは誰にでも響く
    別に金じゃなくても良い実験で金が選ばれたのはそういう理由があるのかなと感じた

    ゲスト

    ははは

    きこ

    別に金じゃなくてもいい実験なんですかね?
    カネって言う人が食いつくワード的な

    研究者も話題性を狙ったか?
    本当に錬金術がしたいわけじゃないのかな

おじゃま虫

そりゃ水から酸素作って燃料電池作るくらいの経費で出来るなら商売にもなるけどこれは全く無理。

ゲスト

金の価値下がるかとも思ったけどそうでもないのか…
というか研究者は金の価値を下げたくてこの実験触れた可能性もある…?
経済テロリストなの…?

ウォッカ

このような研究の先に核兵器の無効化が見えてきませんか?
それであれば、素晴らしいと思います。

トトロン

できてもすぐに消えるから通常の意味できたとは言えないのでは?

通りがかり

現時点では実用面はまだまだのようだが、変換精度が今後高まることが出来れば新たな産業として出来る事を期待したい。

みっち

いつかきっと物理で解決される時が来ると思ってましたが、ホンモノの錬金術師達も悔しがっていることでしょう。
とはいえ、実験と観察が理論の進化に寄与するのはワクワクします。今後も期待しています。

エド

(・へ・)

    アル

    兄さん!?

    ニーナ

    あそぼ う あそぼうよ あそぼうよ

ボタン

金を採掘にきてた、古代の神も、アヌンナキのことだけど、こなくてすみそうですね。こんなことできれなら。

nana

・そうした天体現象や宇宙における“巨大錬金術”の解明にもつながる可能性があります

ライターの構成的な意図は分かります。
ただ、天体現象を錬金術に例えるのは、安っぽい気がしました。

    ゲスト

    例えじゃなくて、実際に鉄より重い元素の生成には太陽クラスの核融合じゃできなくて超新星爆発とかの天体現象によってできると考えられてるからそのまんま巨大錬金でしょう、そのエネルギーについて詳細に調べられたんだから、宇宙の成り立ちの解明につながるのは当然、安っぽさは感じられない

加持ノブ

数十億ドルの実験装置の中で、一瞬だけ金が生成され消えた。
学術的には価値が有るが、利益には結び付かない。
例え金が安価に生成出来る技術が確率したとしても、金は、その錆びない特性と希少価値で高価である事から、安価に大量生産できたら価格が暴落するので、大した儲けにはならない。
もし、私が金の生成技術を確立したなら、何処にも発表せずに、値崩れしない程度に売って莫大な資産が出来てから、発表する。

ゲスト

タイトル詐欺か…

ゲスト

この件で「金が作れた」だけに注目してあれこれ言う(肯定的意見でも否定的意見でも)のは、
この現象に対する無知を自己紹介してるだけだからやめようね
確かにセンセーショナルで分かりやすい事象ではあるけどさw

ゲスト

文章が読めない人がいると最近話題ですが、まさにその証左となるようなコメントが溢れる記事で趣深い。

おっさん

核種変換の夢がん実現したんだから喜べや
核廃棄物の核種変換が可能になる日が来る戸口になるかも知れない

ゲスト

放射性セシウムが無害な物質に変換できたら

ゲスト

鉛が金に変わることは原子炉(特に高速炉)内の中性子による核変換でも普通に起こりうるので、タイトルのつけ方はあまりよくないと思います。高速炉内の錬金術の方がより実用的。加速器内のこの種の核変換は一般的な光核反応と理解してよいのだろうか。

GT

その通り、セシウムからカルシウムへの元素変換はこんな重設備要らない…

ゲスト

さっそく暗号資産界隈が騒いでた
生成できたのだから金の価値は下がる
これからは暗号資産の出番だ、と

発言者がアホなのか、道化を演じて盛り上げようとしているのか、情弱を騙せるとでも思っているのか
商魂逞しく、ナナメ上過ぎて笑えた

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