蜂の子の親は何を食べているのか?
中部地方を中心とした日本の里山では、シダクロスズメバチの幼虫を「蜂の子」として食べる文化が根づいています。
これらの蜂は「巣を採って終わり」ではなく、時に愛好家たちの手で飼育され、与える餌によってより大きく、より美味しく育てられることもあります。
この文化は戦後の食糧難時代にも重宝され、栄養価の高い貴重なタンパク源として評価されてきました。
とくにシダクロスズメバチは「大きく育つ」「味がよい」として重宝されており、現在も地域住民の間で「蜂の子飼育」は続けられています。

ところが、シダクロスズメバチが自然界で何を餌としているのか、実はあまり詳しく知られていませんでした。
1970年代に行われた調査では、昆虫を中心に54種が記録されましたが、それ以降の本格的な研究は長らく行われておらず、半ば飼育者の“経験と勘”によって飼育が続けられてきたのです。
そうした中、地元の飼育者たちは鶏肉や鹿肉などの“肉”を与えることで巣を大きく育ててきました。
彼らは実際に、野生のスズメバチが小鳥や小動物を捕食する場面を目撃しており、独自の知見に基づく飼育方法を実践していたのです。
ただこうした地元民の報告はあくまで主観的なものでしかなく、客観的な科学的証拠は得られていなかったのです。
そこで今回の研究は、こうした“経験知”が科学的に正しいかどうかを初めて検証しました。